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大阪地方裁判所 昭和29年(行)48号 判決

大阪市東成区東小橋南之町二丁目二十番地

原告

佐藤嘉美雄

同市東区杉本町

被告

大阪国税局長

塩見俊二

右指定代理人

東山芳三

同市東成区大今里本町一丁目百四十八番地

被告

東成税務署長

徳村昭夫

右指定代理人

雪本義三

右当事者間の昭和二十九年(行)第四八号所得金額決定取消請求事件について当裁判所は次の通り判決する。

主文

原告の訴は、これを却下する

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告の本件口頭弁論期日に出頭しないが、原告提出にかかる訴状によれば「被告大阪国税局長(以下被告局長と略称する。)が原告に対し昭和二十九年三月二十三日附でした昭和二十七年度分総所得金額を金五十五万七千円とする審査決定を取消し右総所得金額を金三十四万六千二百円に変更する。訴訟費用は同被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因の要旨は、原告は被告東成税務署長(以下被告署長と略称する。)に対し原告の昭和二十七年分総所得金額を金三十四万六千二百円として確定申告をしたところ被告署長は昭和二十八年三月三十一日附の更正決定でこれを金五十五万七千円に更正する決定をしたので原告は被告署長に対し再調査の請求をしたが被告署長は同年七月二十二日再調査の請求を棄却する決定をした。そこで原告は被告局長に対し審査の請求をしたところ被告局長は昭和二十九年三月二十二日審査の請求を棄却する決定をした。しかし被告局長の右審査決定は原告の総所得金額について何等具体的調査をしない違法があるから右決定を取消し原告の総所得金額をその申告額金三十四万六千二百円に変更を求めるため本訴請求におよぶというにある。

被告局長指定代理人および被告署長指定代理人は各主文同旨の判決を求め、答弁として再調査の請求もしくは審査の請求の目的となる処分または変更を求める訴は行政事件訴訟特例法第五条第一項または第四項の規定にかかわらず審査の決定にかかる通知を受けた日から三カ月以内にこれを提起しなければならないのであるが(所得税第五一条第三項)被告局長の原告に対する審査決定は昭和二十九年二月二十七日原告宛に発送され同年三月二日原告に到達したから原告は右審査決定到達の日である昭和二十九年三月二日から三カ月の期間内である同年六月二日までに被告局長に対し右審査決定取消の訴を提起しなければならないにもかかわらず右出訴期間経過後である同年六月二十二日に提起された本訴はこの点において不適法として却下を免がれないと陳述し、立証として乙第一号証の一、二、第二、三号証、第四号証の一乃至三、第五号証を提出し証人木村傑の訊問を求めた。

理由

原告は本件訴状において被告局長に対し請求の趣旨記載のように同局長の審査決定(原告は審査決定の日附を昭和二十九年三月二十三日と主張しているが後段認定のように右審査決定が同年二月二十七日発送され同年三月二日原告に到達していることから考えるとその日附は誤記であると認められる。)の一部取消を求めているのみで被告署長に対する請求の趣旨の記載を欠いているが本件訴状の当事者の表示中に被告署長の記載があることと原告主張の請求原因事実とを対照して考察すると原告は被告署長に対して同署長がした昭和二十八年三月三十一日附更正決定および同年七月二十二日附再調査請求棄却決定について前同様一部取消を求める趣旨であると解するのが正当である。そこで本件の争点である本訴が出訴期間経過後に提起された不適法な訴であるか否かについて判断する。

所得税法第五十一条第三項によれば再調査の請求の目的となる処分(更正決定)、審査請求の目的となる処分(再調査請求棄却決定)または審査決定の取消変更を求める訴は審査決定の通知を受けた日から三カ月の出訴期間内に提起しなければならないところ、真正に成立したと認められる乙第一号証の一、二、第二、三号証、第四号証の一乃至四、第五号証および証人木村傑の証言を総合すると、被告局長は昭和二十九年二月二十七日原告に対し審査請求を棄却する旨の決定をし右審査決定は同日大阪東郵便局同日引受番号第七一〇号特殊郵便に付して発送され同年三月二日原告に到達した事実を認定することができるから、原告は右審査決定が原告に到達した昭和二十九年三月二日から同年六月二日まで三カ月の出訴期間内に前記の訴を提起すべきである。しかるに原告が本訴を提起したのは昭和二十九年六月二十二日であること本件記録に徴し明らかであるから本訴期間経過後の不適法な訴として却下を免がれない。よつて訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 相賀照之 裁判官 中島孝信 裁判官 小畑実)

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